想像の幻想論

様々な思考の束

「トップをねらえ!」

さて、トップをねらえも同性愛の作品として読めるのでは、と思ったみなさん正解です。

と言う訳です。

え?説明しろと?まあ、はい

まず、コーチはノリコの父に地球を守ることを使命として託されます。コーチはタカヤ提督(ノリコの父)の一人娘であるノリコを「タカヤ提督の一人娘」という属性からだけ見て選んでいます。なぜ「タカヤ提督の一人娘」という属性をあえて選ぶかというと、共にタカヤ提督の復讐のため邁進できると踏んだからです。また、まだ兵士として未熟さの残る(私情を挟みがちの)カズミの相棒にさせることによりカズミを成長させるためです。さらに、ここでは「タカヤ提督の一人娘」という属性は注目され、また忘却されています。忘却とは「そもそもタカヤ提督は一人娘を最前線に送るような人物だったのか」ということがあえて見過ごされている点を言います。それはコーチのノリコに対する無意識の嫉妬というべきか、あるいは、偉大な使命のためには誰かが犠牲になっても仕方ないという傲慢さ故か、分かりません。 コーチとカズミは一応結婚しますが、まるでイエスの母マリヤがイエス出産後も処女であるかのように見せるため夫のヨセフが老人として描かれることが多いように、その結婚生活は極端に短いです。コーチはカズミの両親と旧知の仲であり、カズミを小さい頃から知っていました。つまり、肉親のような関係でもあったのではないかと思われます。 ノリコとカズミの心がやっと一つになった合体シーン、二人はすぐに息を合わせてイナズマキックを放ちますが、これもなかなか意味深です。2018年の宇宙怪獣捕獲計画により、カズミの父は行方不明母は重体(その戦いにおいて二人はイナズマキックを初めて使います)。つまり、イナズマキックはもともとコーチとカズミの技だった訳です。つまり、恋人との合体技であったのが、ノリコとの合体技になることはどういう意味かというと… カズミとユングは表面上はライバルに見えますが、やはりライバルです。恋の。ユングは宇宙怪獣を見たノリコが泣いてしまった後、急に二人に近づきます。正確には、ノリコに近づきたいがためカズミに近づいて、カズミに近づきたいがためにコーチに本気であるように見せかけたのです。まあ、カズミにはユングがコーチに本気であるなど思ってはいなかったようですが。 事実、カズミはノリコと宇宙に出る際コーチとユングが地球に残ることをほぼ心配してません。そこには、カズミとユングの友情や信頼もあるのでしょうが。 ユングは実にノリコの涙に弱い女です。一回目の宇宙怪獣を見て泣いた後もそうですが、二回目のコーチにベッタリなノリコに嫉妬(どっちに?)して決闘を仕掛けた後の涙にも、ひどく同情して保健室にまで連れて行き、嫌いなはずのカズミにノリコについて話しています。 そして、最終話のユングがバスターマシンとコーチをカズミに譲るシーンは、実はノリコも譲っているのだと考えられます。

さて、問題です。ノリコはカズミとキミコ、どちらが好きでしょうか。

簡単ですね。キミコの方です。なぜなら、10年後の姿であるキミコを一目見てそうだと分かったのに、カズミの方は最初「誰?」となっていたからです。個人的にトップのテーマは「想いは時を超える」だと思うのですが、最後に「もう会えない!ごめんキミコ!」と言ったことはキミコに届いているという描写があります。ある種、カズミは想いが届かないからこそ最終決戦に志願してノリコの元に行ったのであって、想いが通じているキミコは地球にいて待っていても良かったのでしょう。

手紙のシーンですが、娘の写真を同封するというのを不思議に思った人はいませんか?おそらく、あれは自分の老いた姿を大切な人に見られたくないという思いと、作品の要求として地球の未来というのを予見させねばならなかったわけだと思います。しかし、どう考えても、構造上というか機能的にはキミコの娘はノリコにとっての娘でもあるわけで、キミコはノリコにとって地球で待つ妻であると読み取れます。地球で待つ妻と子というものが作品において要請されたとき、キミコがノリコの妻となり、キミコの娘がノリコの娘となったという訳です。ノリコは自分の父と同じ役割をしているのです。

カシハラさんは、結構あからさまなので分かった人もいたでしょう。カシハラさんはカズミと一緒に宇宙に行けるという夢をぶち壊しにされて、一生を台無しにされたようなものです。いえ、こういうのは酷いですね。カシハラさんは、「カズミ」がノリコと話しているのを見て、嫉妬するシーンが初登場シーンです。コーチではありません。つまり彼女は大好きなカズミと宇宙に行けないことが悔しくて、ノリコを虐めたのです。「あなた結構頑張ったわね!」とか言ってくれるし、根はいい子です。そして、10年後にはコーチになっていますが、黒板の落書きに「カシハラオールドミス」と書かれています。その後も彼女が結婚したという情報は出てきません。つまり、彼女はカズミを本当に一途に好きだったのでしょう。もしくは、コーチ亡き後のカズミの精神的な妻であったという可能性さえあります。その辺はもう妄想入ってますが。最終話の「行ってしまわれるのですね…」はとてもただの元同級生に言うトーンでは無かったとだけは言っておきます。

関係性だけで語るとこんな感じになるという感じでしたね。今日はここまでで勘弁してください。